布団を被り、隙間から覗くと、慌てた寛一がベッドの隣でそわそわするのが見える。しばらく気まずい沈黙が続く中、彼が手に持っているものが見えた。
(あれは…)
「…それ、面白いですか?」
彩響の質問に寛一があっ、と言う。
「あ、失礼しました。本棚にあったのでつい…これ、彩響さんの雑誌ですよね?知りませんでした、彩響さんは男性の雑誌を作っていたのですね」
彼が手に持っていたのは、今まで彩響がずっと作り続けている雑誌だった。毎月一冊持って帰ってくるのが、結構溜まっている。彩響にとってそれはお金であり、涙であり、愛憎の塊である。彩響がちらっと布団から顔を出した。
「…どうですか、それ」
「あ、とても良いです。俺、これ何回か書店で買ったことあります。とても繊細で興味深い内容がいっぱいあるから、いいと思っていました。…彩響さんはいつからこれを?」
「参加したのは6年前からで…責任持つ立場になったのは3年前かな…」
「すごいです。本を作れるなんて、誰もができる仕事ではありません」
「そんなことないよ。…実際誰も女が男物扱うのを喜ばないし」
別に寛一さんが自分のことを責めているわけでもないのに、嫌味を言っているような発言だ。彩響の言葉に寛一さんが静かに雑誌を閉じた。
「彩響さんは、どうして男性向け雑誌社で働くようになったのですか?」
その質問に大学を卒業した頃を思い出した。その時はとにかくお金を稼ぎたくて、内定を貰ったリストの中で最も給料が高いところを選び入社した。大学の同期だった理央も一緒で、お互い頼り合いながら悪くない生活をしていた。そう、はじめの頃は…。
(あれは…)
「…それ、面白いですか?」
彩響の質問に寛一があっ、と言う。
「あ、失礼しました。本棚にあったのでつい…これ、彩響さんの雑誌ですよね?知りませんでした、彩響さんは男性の雑誌を作っていたのですね」
彼が手に持っていたのは、今まで彩響がずっと作り続けている雑誌だった。毎月一冊持って帰ってくるのが、結構溜まっている。彩響にとってそれはお金であり、涙であり、愛憎の塊である。彩響がちらっと布団から顔を出した。
「…どうですか、それ」
「あ、とても良いです。俺、これ何回か書店で買ったことあります。とても繊細で興味深い内容がいっぱいあるから、いいと思っていました。…彩響さんはいつからこれを?」
「参加したのは6年前からで…責任持つ立場になったのは3年前かな…」
「すごいです。本を作れるなんて、誰もができる仕事ではありません」
「そんなことないよ。…実際誰も女が男物扱うのを喜ばないし」
別に寛一さんが自分のことを責めているわけでもないのに、嫌味を言っているような発言だ。彩響の言葉に寛一さんが静かに雑誌を閉じた。
「彩響さんは、どうして男性向け雑誌社で働くようになったのですか?」
その質問に大学を卒業した頃を思い出した。その時はとにかくお金を稼ぎたくて、内定を貰ったリストの中で最も給料が高いところを選び入社した。大学の同期だった理央も一緒で、お互い頼り合いながら悪くない生活をしていた。そう、はじめの頃は…。