スマホからずっと声が聞こえてくる。昼インタビューした女優の声だ。彼女の話をずっと聞いていると、まるで子守歌のように聞こえる瞬間がやってくる。これは決してこの女優のせいではなく、誰でも同じ。なぜなら今は…
「…もう3時か」
オフィスには自分だけが残っていて、とても静かだった。必ずしも今この録音をパソコンに打たなきゃいけないほど、スケジュールに余裕がない訳ではないが…いや、余裕がないのは彩響本人の心だ。明日の朝には又撮影の予定があり、その次には取引先とのランチが予定されている。その後も、その後も…。だから少しでも仕事を先に済ましておかないと安心できない。彩響は大きくあくびをして、もうすでに冷えてしまったコーヒーを一口飲んだ。癖のようにスマホ画面に触れると、1時間くらい前に来ていたLINEメッセージに気が付いた。発信者は「理央」だ。
「やっほーまだ会社?」
「そうだよ。今まで寝ないで何してるの?」
彩響がメッセージを返すと、理央がすぐ反応した。
「今日は亜沙美と夫留守なの。久しぶりにシングルの気分を味わいながら夜更かししてた」
「程々にしなさい。肌に悪いよ」
「ねえねえ、なんか面白いことない?例えば、家にいるイケメンさんと何かかあった、とか」
理央の質問に彩響は鼻で笑った。あの変態家政夫さんと?ありえない、ありえない。
「なんのロマンスを夢見てるの?ないよ、そんなの」
「だって、若い男女が、一つ屋根の下にいるんだよ?」
「やめて、失礼だから」
「本当になにもない?一切?なにも?」
(…彼は私ではなく、私のパンティーに夢中です、とはさすがに言えないわ)
理央の質問に答えるなら、洗濯に執着して、口数が少なくて…そもそも彩響自身が家にいる時間が少ないため、そこまで深く会話したこともない。いや、そもそも深く会話する理由もないが…
「なにもありません。これからもありません」
「…もう3時か」
オフィスには自分だけが残っていて、とても静かだった。必ずしも今この録音をパソコンに打たなきゃいけないほど、スケジュールに余裕がない訳ではないが…いや、余裕がないのは彩響本人の心だ。明日の朝には又撮影の予定があり、その次には取引先とのランチが予定されている。その後も、その後も…。だから少しでも仕事を先に済ましておかないと安心できない。彩響は大きくあくびをして、もうすでに冷えてしまったコーヒーを一口飲んだ。癖のようにスマホ画面に触れると、1時間くらい前に来ていたLINEメッセージに気が付いた。発信者は「理央」だ。
「やっほーまだ会社?」
「そうだよ。今まで寝ないで何してるの?」
彩響がメッセージを返すと、理央がすぐ反応した。
「今日は亜沙美と夫留守なの。久しぶりにシングルの気分を味わいながら夜更かししてた」
「程々にしなさい。肌に悪いよ」
「ねえねえ、なんか面白いことない?例えば、家にいるイケメンさんと何かかあった、とか」
理央の質問に彩響は鼻で笑った。あの変態家政夫さんと?ありえない、ありえない。
「なんのロマンスを夢見てるの?ないよ、そんなの」
「だって、若い男女が、一つ屋根の下にいるんだよ?」
「やめて、失礼だから」
「本当になにもない?一切?なにも?」
(…彼は私ではなく、私のパンティーに夢中です、とはさすがに言えないわ)
理央の質問に答えるなら、洗濯に執着して、口数が少なくて…そもそも彩響自身が家にいる時間が少ないため、そこまで深く会話したこともない。いや、そもそも深く会話する理由もないが…
「なにもありません。これからもありません」