日差しが暖かい、とても平和な朝。
腰をまっすぐ伸ばし、正座していた青年が両手でなにかを持ち上げた。彼の指にかかっているのは女性のパンティー。かわいらしいレースがひらひらと風に揺れる中、青年がとても深刻な顔でそれを観察する。やがて彼の鋭い目つきが光り、口からこんな言葉が流れてきた。
「うむ、レースが5㎜ずれたか」
「……」
出勤準備を終え、リビングに出てきた若い雇用主はそれを見て長いため息をついた。自分の下着を見つめる、あの家政夫さんの目。それはまるで獲物を狙うライオンの目そのものだった。もう誰も彼を止められない。
「さよなら、私のプライバシー…」
峯野彩響、30歳。今日もこうして彼女は家政夫を家に残して家を出た。
「主任!見ましたか、売り上げ!今月さらにUPしましたね!」
オフィスに着くと、佐藤くんが早足で彩響の方へ走ってきた。今日も元気そうでなによりだ。
「佐藤くん、おはよう。皆が頑張ったおかげだね」
「なに言ってるんすか、主任が必死でいいインタビュー取ってきてくれたおかげじゃないっすか!俺も又頑張りますので、何でも言ってください!」
「ありがとう、又よろしくね」
佐藤君の反応は素直で嬉しい。しかしこんな風に思いっきり褒めるのは、新人で世間知らずの彼くらいで、現実は…。自分の席に座ると、誰かが彩響を呼ぶ声がした。