「もう気付いているんでしょ?あいつは私の元婚約者です。でも、元々クソ野郎だし、寛一さんがそこまでキレる理由もなかったんだと思います。でもなんで?なんでそこまで怒ったんですか?」

「それは…あなたのドレスを無視するような発言をしたからです。俺が必死で洗ったのに、それをダサいとか言われ、つい…」

「いや、いくらなんでもキレすぎでしょう。私、寛一さんがこんなに喋れる人だと初めて知りました」
寛一さんは困ったように視線を下ろす。言い辛いのか、じわじわと時間を延ばす。

「…なんであの男は彩響さんにあのような態度をとるのでしょうか?」

「それは…元カノだから?」

「たとえ別れたとしても…いや誰にでもそんな態度をとってはいけないと思います」

「あいつは元々、女を自分より低い存在だと思ってるんです。それが私と別れた大きい原因ですし」

「理由になりません。とにかく、あいつは無礼過ぎました。それが理由です」

「大丈夫ですよ、私も別れて正解だったと思うし」

「もう彼の話はやめにしましょう」


寛一さんが顔をあげる。彩響は肩を一回すくめた。言われた通り、こんな話長くしても楽しくない。


「そうですね。あいつ又女に振られたらしいし。私たちがこんな話してもなんの得もないですね」

「…彼はよく女性に振られるんですか?」

(…あれ?さっき「彼の話はやめましょう」とか言ってなかったっけ?)

「さあ、どうでしょう。でも、お気に入りの女だったら彼もうまくいくんじゃない?」

「お気に入りの女性…?」