(それにしても、私も結構大胆なことをしたものね…女一人の家に男の入居家政夫とは)


改めて思うと、凄いことをしたのは間違いない。しかし、毎日仕事に追われる日々を送りながら家事をするのは絶対無理。それにこの2LDKのマンションは、ひとり暮らしには勿体ない広さだ。実際以前、ルームシェアしてくれる人を探してみようかな…と真剣に思ったこともあった。


(無駄な部屋を活用して、その分安く家政夫を雇えるのなら一石二鳥!うん、これはいい選択に間違いない!)

そんなことを考えていると、彩響は自然とこの家を契約した時のことを思い出した。そう、あのクソ元婚約者のことだ。二人で住むには完璧な家だと、一目で確信した。それですぐ契約して、いろいろ進行している途中であんなこと言われて…。


「…あのクソ野郎、心変わりするならこの家契約する前にすればよかったのに」


ピンポンー!

「はーい!」


タイミングよくチャイムが鳴った。


早速玄関を開けるとそこには予定通り、荷物を持った三和さんが立っていた。


「こんにちは。…荷物それだけですか?」


これからここで生活する予定の人にしては荷物が少なすぎる。彩響の質問に三和さんが軽く頷いた。


「はい、これだけです」

「そうなんですね。どうぞ、中へ入ってください」

「失礼します」