リビングに戻ると、寛一さんがテーブルを片付けているのが見えた。みんなが来てちょっとは様子が変わるのかと思ったけど、もう普段の姿に戻っている。彩響はカバンを手に持って言った。
「また出勤します。今日は帰り遅くなるので、食事は要らないです」
「かしこまりました。会社でも食事はきちんとお取りください」
「はーい」
寛一さんは玄関までついて来た。そして玄関を開けようとする彩響を止める。
「ちょっと失礼」
すると自分の手で彩響のシャツのボタンを留め、襟まで整えてくれる。綺麗に形を作ってから、彼が静かな声で何かを言い出した。
「あなたの職場には男性がいっぱいいそうで…」
「いっぱいっていうか、女性は私一人です」
「だから心配になるのです、いろんな意味で」
「…え?」
その言葉の意味を理解する前に、寛が言った。
「では、行ってらっしゃい。気をつけて」
「あ、はい、行ってきます」
外に出て、襟に触れると、さっきの寛一の声が頭の中で響く。
――「だから心配になるのです、いろんな意味で。」
さっきまで微妙に傷ついていたプライドが多少回復した気がして、なんか笑えてきてしまった。全くその必要はないのに、やはりどうしても気になってしまう。
「…本当に女に興味ないの?」
解けない疑問を抱いたまま、彩響は歩き出した。
「また出勤します。今日は帰り遅くなるので、食事は要らないです」
「かしこまりました。会社でも食事はきちんとお取りください」
「はーい」
寛一さんは玄関までついて来た。そして玄関を開けようとする彩響を止める。
「ちょっと失礼」
すると自分の手で彩響のシャツのボタンを留め、襟まで整えてくれる。綺麗に形を作ってから、彼が静かな声で何かを言い出した。
「あなたの職場には男性がいっぱいいそうで…」
「いっぱいっていうか、女性は私一人です」
「だから心配になるのです、いろんな意味で」
「…え?」
その言葉の意味を理解する前に、寛が言った。
「では、行ってらっしゃい。気をつけて」
「あ、はい、行ってきます」
外に出て、襟に触れると、さっきの寛一の声が頭の中で響く。
――「だから心配になるのです、いろんな意味で。」
さっきまで微妙に傷ついていたプライドが多少回復した気がして、なんか笑えてきてしまった。全くその必要はないのに、やはりどうしても気になってしまう。
「…本当に女に興味ないの?」
解けない疑問を抱いたまま、彩響は歩き出した。