「そうそう、だから峯野さんも安心していいですよ。あ、もちろんうちの会社は客に手を出すなどそんな破廉恥なことは一切しませんけどね」

「はあ…」


寛一さんはただただため息をつくだけで、それ以上何も言わなかった。彩響は彼らを見守りながらふと思った。


(仲がいいのか、悪いのか…相変わらず変わった人たちだな…)


しばらくの間、家政夫たちの話は続いた。最近の自分達の状況や、仕事の話しなど、いろいろ話している間に彩響は彼らが同期入社で、よく4人でつるんでいたことを知った。そして、社内で寛一さんは結構指名度の高い人材だったらしい。そんな話に、彩響はどこかで見たホストクラブのチラシを思い出した。

(まあ、顔はたしかそこに載っていたお兄さんたちよりマシかもしれ…ない)

「おっと、もうこんな時間か!俺別の予約入ってるんだ。今日の家庭訪問はこんな感じにして、みんなそろそろ帰ろうぜ」


自分の腕時計を確認した河原塚さんが立ち上がった。まるでそれがサインにでもなったように、他の二人も立ち上がる。え、もう?彩響は彼らを引き止めた。


「もう少しゆっくりしてても…」

「いえいえ、もう我々の目的は達成しましたので。この辺で帰ります。お邪魔しました」

「そう!寛一さん、今後も彩響ちゃんのこと困らせずきちんと仕事してね。又見にくるからね~」

「さっさと帰れ…」


軽い挨拶をして、3人はさっさと玄関を出た。最後に玄関を出た河原塚さんが一瞬戻って来て、彩響の手を握った。突然の行動に驚くと、彼が満面の笑みで言う。


「彩響、本当にありがとう、あいつを雇ってくれて」

「え?あ、いいえ…」