「あの、それは…」

「まったく問題ない。とても平和で、快適な環境で仕事している」

「え?あ、そう…です。おかげさまでとても快適に過ごしています」


彩響の返事に3人の目線が一気にこっちへ集中した。嘘じゃない、嘘じゃない。実際家も綺麗だし、物も洋服もきちんと整っている。パンティーのことを外せば、全く問題のない生活を送っているはず…だ。

二人の答えが疑わしいのか、3人はしばらくじっとこっちを見た。気まずい空気の中、先に今瀬さんが声を出した。


「あ、良かったです!寛一はこの通り何考えているかたまに分からないですけど元はいいやつですので。引き続きよろしくお願いします、峯野さん」

「そうそう、こいつ全く女に興味ないから、そういう部分だけは安心していいぞ」

(うん?そうなの?)


これは全く新しい情報かもしれない。彩響が耳を傾けると、寛一さんが困った顔をする。とりあえず、今の発言で、今寛一さんに彼女がいないことだけはすぐ分かった。


(…ていうか、なんか今の発言妙に気に障るけど?なに、私には魅力がないってこと?)

「成…いい加減にしてくれ」

「え、だって本当のことでしょ?寛一さんが興味あるのは『お店』のことだけで――」

「ほら、林渡。その話はやめましょう」


今瀬さんの言葉に一瞬空気が凍る。あれ、なんかおかしいことでも言った…?彩響が4人を見回すと、雛田くんが「あちゃー」と言うのが聞こえる。先ほど話しに出た「お店」っていうのが、そんなにNGワードだったんだろうか。この重い空気に耐えられなかったのか、河原塚さんが先に声を出した。


「あはは、こいつさっきも言ったけど、全く女に興味ないの。なんか前もも顧客に気に入られていろいろ誘われたらしいけど、一発で断ったんだってさ。あの客、すげークレーム入れてきて、Mr.Pinkも結構困ったりして」

「心配だったけど、この目で確認できてよかったぜ。これからもよろしく。じゃあな!」


そう言うと河原塚さんは帰って行った。なんか釣られて頷いてしまったが、よくよく考えてみると…


「あれ…?でも最初自分を選ばなかったからってすごく怒ってたような気がするけど…?」

女、いや男心は秋の空のようなんだろうか。
結局謎だけ残した家庭訪問だった。