「だから、帰れと言っている」


これは、うちの洗濯大好き家政夫さんの声だ。


「何そんな冷たいこと言ってんだよ。ちょっとくらい良いだろ?彩響もいねーっぽいし」


そしてこれはヤンキー家政夫…そう、河原塚さんの声。


「余計ダメだろ!主のいない部屋に入って来るな!ここは俺の仕事場だ!」


再び洗濯家政夫の声だ。彩響は音を立てずゆっくりと彼らの後ろに立った。


「あの…どうしたんですか?」

「彩響さん?!」


声をかけると、玄関前に集まっていた八つの瞳が同時にこっちを見る。彩響に気付いた河原塚さんがこっちへやってきた。

「よっ、彩響!ナイスタイミングじゃん!俺たち今日授業参観来たんだぜ」

「授業参観?」


小学校で使われそうな単語の登場に彩響は首をかしげる。すると雛田くんが腕に絡んできた。

「寛一さんがちゃんと仕事しているか、みんなで見に来ちゃった、へへっ!」

「ごめんなさい、峯野さん、俺は一応止めようとしましたが、言うことを聞いてくれないもので。この二人だけだとやはり心配だったので、付いてきました」


今瀬さんが困ったように笑う。彼の言ってる意味が分からなくはないかも…彩響がそんなことを考えていると、河原塚さんが今瀬さんの肩を軽く叩いた。


「なに言ってんだよ、清嵐。お前口癖のように「寛一はちゃんとやっているんでしょうか」って言ったじゃん!」

「あ、言っちゃった。はは、実は様子を見たい下心はありました。彼、仕事は熱心ですけど不器用なので」

「だから、余計なお世話だと言っている…」

困ったように寛一さんがつぶやく。4人を見て、どのような状況なのかはすぐ理解できた。