「…私はこの会社に入社し、7年目です。そして唯一の女性社員です。7年の間、様々なことがありましたが、なんとか乗り越え、現在主任として働いています」


いざ口を開けると意外と言葉はスムーズに出てくる。7年の間、どれだけ溜め込んでいただろうか。どれだけ悔しいと思ってきたか。


「男性向け雑誌に一人の女社員、私の存在が気に食わない人もいれば、関係なく接してくれる人も勿論いました。しかしやはり前者の方が圧倒的に多かったです。大山編集長もその一人でした。彼は自分がここに入社した瞬間からセクハラを始め、3年が経ったこの瞬間までそれを続け、挙句の果てには私を強姦しようとしました」

「編集長は君が先に自分を誘惑したと言ってたぞ。そして、実際強姦していないのに、お世話になった上司を警察に引き渡す必要あったかね?」

「そうだ。お前は被害者にしちゃぴんぴんし過ぎだ。本当に強姦されそうなことがあったら、どうやってこんなに平気でいられるんだ?」

「お前が大山に恨みを持ってわざと罠にはめたのではないか?」

「もっとはっきり大山を拒否するべきだっただろ。きっとなにか勘違いさせる隙を与えたのではないか?」

「示談金狙いか?」

「そもそもそんな夜中に呼ばれてのこのこ行ったのが間違いだろ」


無礼すぎる質問が次々と飛んでくる。昔の自分だったらもうこの時点で逃げているはずだ。しかし今は違う。いくらでも戦える。この残酷な世界に向かって、自分を堂々と弁護できる。

「なら質問です。夜道に女が一人倒れています。それを見て男が近づきます。どうすればここで女はレイプされずに済みますか?」
「はあ?何を聞いてるんだ。そんなの女が倒れているから…」

「違います。ここで女がどう行動するかではありません。『男がレイプしなければ』女は何もされません。それだけのことです」


一瞬部屋が静かになる。引き続き彩響が自分の携帯をポケットから出し、録音していたファイルを流した。中からは聞くだけで恥ずかしい大山の口説き台詞が流れてくる。それを聞く役員たちの顔も徐々に曇っていくのが見えた。


「私も最初は我慢しました。そうでなくても目立つ存在である私が、こんなことで騒ぎを起こしたくなかったし、女としてこんなことは我慢しなくてはいけないと、自分自身を洗脳しながら耐えました。しかし、もう我慢しません。私がどれだけ短いスカートを履いても、裸でいても、いくら誘惑しても、大山さんが私に手を出さなければ彼が逮捕されることはなかったはずです。ここではっきり言います。私は悪くありません。何も悪くありません。皆さんが何を言おうと、これが真実です」

「そんな偉そうに言ってるけど、この件で会社に大恥を掻かせたんだぞ!その責任はどう取るつもりだ!」

「それも私に聞かず、大山さんに聞いてください」

「最初から最後まで自分に責任はないというつもりか!今ここでお前をクビにしても誰も止めないぞ!」

「私は被害者です。クビにするならどうぞしてください。しかし自分では絶対辞めません。罪もない私がここを辞める理由はありませんから!」

「この…!」

「もう皆やめてくれ!もう十分だ!」

ヒートアップする中、ずっと黙っていた社長が大声を出した。その声にみんなの動作が止まる。彩響もそのまま社長を見つめた。

大昔、社長が部屋の中で言ってたことを未だに覚えている。この会社に女がいることをあれだけ嫌っていた彼だ。今更ここで考えが変わったとは考えられない。

これでやっと、この会社をクビになるのか。結局はこの人の望み通りになるんだろうか。

沈黙の中、やっと社長が口を開けた。