ーそして、あの日から3年。
「佐藤くん!佐藤くんいる?」
彩響の声に書類を抱え込んだ男が部屋に走ってきた。
「峯野主任、どうかしたんすか?」
「56ページが見当たらないの。どこにあるか分かる?」
「え?全部封筒に入れたはずですけど…」
「今すぐ広報部に行って内容確認して来て。早く!」
急かす声に佐藤くんは足早で部屋を出ていく。続いて机の上の電話が鳴った。表示された着信番号ですぐ誰なのか分かった。彩響は視線をパソコンの画面においたまま「通話」ボタンを押した。
「おい、峯野!お前データはどうした?」
「先月届いたアンケート結果の数値ですしょうか?今朝チャットワークで投げております」
「それは見たよ、そうじゃない、フォントの話だ!俺ゴシック体は嫌いだから明朝体使えって言っただろう!」
これは昔から自分のことを嫌う大山編集長だ。3年前中途採用で編集長になった人だが、最初彩響のことを勝手に狙っていたらしく、断ったその日からパワハラ+セクハラが始まった。最近ではますますその強度がひどくなっている。
「編集長、大変失礼したしました。早速再送信しますのでお待ち下さい」