EP.7
「今日の一時間目数学だったよね。頼葉みっちーに次遅刻したら補修だって言われてるんだよね。」
「え、まじ?俺も言われてるわ。」
「春斗も!?よかったー。みっちーとタイマンで補修とかメンタル持たないとこだったわ。」
頼葉と春斗は、補修が一人じゃないことを心の底から喜んだ。
「沙紀はー?補修って言われてる?」
「私は言われてないよ。言われると思う?」
自信満々のどや顔を見せつけた。
「そりゃそうだよねー。沙紀が補修になるわけないよねー。どんだけ寝坊しても点数とってるしねー。」
頼葉は少し恨めしそうな口ぶりで言う。
「沙紀は勉強大好き人間だから仕方ないって。勉強できない組の俺たちは黙って補修受けようぜ。」
「ちょっと。一応春斗よりは点数とってるから。」
「別に勉強は好きじゃないよ。教科書を読書として読んでるだけ。」
「補修は補修だから。点数とってるとか関係ないから。」
「沙紀は教科書を読書の対象とすること周りにあまり言わない方がいいよ。」
「沙紀は変人だかんな。」
三人が同時に話すことをやめた方がいいって言ってくれる人は現れないのだろうか。
っところで。
「二人はどこに向かってんの?教室反対だけど?」
なぜか頼葉と春斗は私を誘導するように、図書室側へ歩いていた。
私がなにも言わないことをいいことに。
「あ、れ――。おっかしいねぇ。教室反対だったかー。迷っちゃったねぇ。」
「そうだな頼葉。おかしいな。誰かが俺たちを教室に行かせまいと企てているんじゃないだろうか。」
「それに違いないですね。春斗。犯人見つけないとだね。」
二人の茶番を見ることは私の習慣だ。
「補修って言われるのが嫌なだけでしょ。二人が補修って言われても、私も一緒に受けてあげるから行くよ。」
二人は声を綺麗にシンクロさせ、指ハートをつくって言う。
「沙紀。らびゅうぅぅぅぅう。」
私はうまく連れていくことに成功した。
でも…。