EP.3

 支度を済ませ、ドアを開くと、しっかり春斗がいた。
 春斗は廊下で胡坐をかき、手を組んでいる。

 今日も――かっこいい――。

 そんなことを思う私は幼馴染として、末期だ。



 「いやーー。めんぼくない。人って眠ると中々起きれないのよ。」


 「それ昨日も一昨日も聞いたけど。」


 「まぁ、あれだよね。私に一般的な起床を求めることがナンセンスだよね。」


 「期待していた俺がバカでした。」

 はっきりと溜息をついて、階段を下りる。

 「よくわかってんじゃん!じゃ、ご飯食べる。」

 春斗は私の腕を、その大きくごつごつした手でつかんだ。

 「沙紀。今の時間知ってる?ご飯食べる時間なんてあると思う?」

 リビングの時計を指さして、言う。

 「はちじ、はんだね。」

 「じゃあ、始業時間は?」

 私はしっかりと朝食が用意された食卓に座って、言う。

 「八時四十五分だけど。もう遅刻確定だし、いいんじゃない?それにさ、ご飯はしっかり食べないとダメなんだよ!授業中お腹なるから。」

 「沙紀の場合、後半のこと気にしてるだけだろ。この前、盛大にかましてたし。」

 「あれ、めっちゃ恥ずかしかった。しかも国語ね。最悪も最悪よ。」

 
 春斗は降参したのか、あきれたのか、わかってくれたのか
 食卓に座って、一緒にご飯をつついた。


 「うまっ。まじで沙紀のお母さんの卵焼き好きっ!!」

 ハムスターですか?と突っ込みそうになるほど、口いっぱいに含んで微笑みを私たちに向ける。

 「あら、春斗君ありがとうねー。いっぱい食べていきなさい。」

 「すいません!いただきます!!」

 
 春斗と私は何を思ったのか、朝ごはんの美味しさに時間を忘れていた。