老いた男は「ぐひひっ」と卑劣な笑い声を洩らし、あたしの顔に酒臭い息をかけてきた。


あたしはそんな仕打ちにも表情1つ変えることなく、男の思うがままにベッドの上に寝かされた。


男は躊躇することなくあたしの服をはぎ取り、白く張りのある肌に生唾を飲み込んだ。


「もったいねぇなぁ」


はぁぁぁぁ~。


と、深く息を吐き出す男。


男の年齢は知らないが、見たところ60台後半か。


シワシワの手が伸びてきて、その人差し指があたしの右目に突き立てられた。


グリッと眼球の周りを指が一周すると、あたしの右目は簡単に体から引き離された。


男はあたしの茶色かかかった眼球をまじまじと見つめ「ぐひひっ」と、笑った。


そして、それにキーホルダー用の金具を取り付けると、ボロボロになった茶色にズボンのポケットへと大切に仕舞い込んだ。


次に、男はあたしの首の下にナイフを入れ、そのまま真っ直ぐに引き下ろした。


まるでチャックのついたお人形のように二つに割れたお腹から、大切そうに大腸を引きずりだす。


男は、今度はそれを壁にぶら下げて飾りにみたてた。


他の臓器を傷つけないよう。


丁寧に、丁寧に、各臓器を、1つも残さず。


「さぁ、そろそろいく時間じゃないかぁ?」


男がそう言ったので、あたしはそっと自分の体から上半身を起してみた。


魂はすんなりと体から離れ、あたしはフワリと空中へ浮いた。


「ありがとう、再生屋さん」


あたしは、聞こえるハズがないと知っていながら男にそう声をかけて、天へめがけて飛び立った。




この村では今でも土葬が行われているため、死んだ魂が体から離れられず、天へ召されないことが多々あった。


そこでできたのが、魂の再生を促し、入れ物の体を破壊する、「再生屋」。


今日もまた、1つの死体が扉を叩く。