「君も知っていると思うけど、篤はちょっと非行に走っている所もあって。
彼女もそんな息子の将来が心配だったのだろう。
だから、うちの会社に篤を入れて欲しいって頼まれて」


「えっ?この会社に…。
お母さんが?」


なんとなく、篤さんから聞いている話とは微妙に違う。



「とりあえずその場で私は返事出来なくて。
急にそうやって私の子供を産んでいるとか言われても、混乱して。
家に一度帰り、妻に全てを話したんだ。
そうしたら、妻が篤の事をちゃんと認知しろと言い出して。
その後、うちの妻も交えて、篤の母親と三人で話す場を設けて」


そう言って、会長は、ここからが本題だと言うように、私の目をジッと見て来る。


「その時の話し合いで、篤の事をうちの籍に入れる事に決まった。
だけど、そんな事を素直に受け入れるような奴じゃないと、篤の母親が言って。
だから、篤の母親は、金でお前を売ったのだと、篤には話す事になった。
うちには子供が娘しか居なくて。
その事もあって、私が跡取りが欲しくて、篤を金で買った事にすると」


「その話…本当なんですか?」


それが本当なら、篤さんのお母さんの印象も、この人の印象も、けっこう変わる。


そして、この会長の奥さんも、そんな旦那の子供を家族として迎え入れようと、なんていい人なのだと、思った。