「その時は、知らなかったけど。
後から聞いた彼女の話では、篤を妊娠していると知った彼女は、
私にそれを知られたら、堕ろせと言われたり…、
いや、無理矢理堕胎させられるんじゃないかと怖くなって、私の前から消えたそうだ。
その話は、20数年振りに現れた彼女から聞いたのだけど」


その会長の話は、篤さんは知っているのだろうか?


私なんかが、聞いていい話なのだろうか?


「彼女、私に子供を産んでいる事は言うつもりはなかったらしい。
ただ、それなのに、急に私の前に現れて、私の子供を産んだと話して来たのは、
彼女は癌を煩い、先が短いと知ったからだそうだ」


"ーー俺の母親、癌になって。
最初は俺が19の時で、そっからまた再発したりだなんだで。
その医療費でけっこう金掛かったんだけど。
まー、普通に入院してりゃあなんとかなったのかもだが、
段々と個室がいいだ、もっといい病院がいいだとか言い出して。
俺の知らないうちに、川邊に母親連絡取っててーー"


篤さんからは、そう聞いている。

だから、お金の為に、母親に売られたと。