「一昨日、梢さんのお父さんの赤井君には挨拶させて貰ったんだよ。
うちの末の娘が[オバケのきもち]が大好きで。
ちょっと、サインを貰って」


会長の末の娘さんは、確か小学三年生。


その子は、篤さんの妹でもある。


「オバケのきもちシールも、今は入手困難で。
赤井君本人でも、手に入らないみたいだね?」


会長は私に気を使っているのか、
この場を和ますようにそう話している。


そう分かっていても、私は緊張で顔がひきつるし、胃が痛い。


この緊張は、この大会社の会長だからか、篤さんの父親だからか、そのどちらか分からないけど。


「オバケのきもちシール…そんなに手に入らないんですね…」


そのオバケのきもちシールは、
義父の原作の[オバケのきもち]のアニメ化で作られた商品なのだが。


漫画の設定で、毎回違うオバケが出て来て、話の最後にそのオバケが成仏すると、口からそのオバケそっくりの魂が出て来て昇天する。


その魂を、シールとして売り出していて、
オバケのきもちシールとして、巷で入手困難らしい。


まだアニメになる前に、一度義父に訊いた事が有った。


「えっ、オバケ自体が魂じゃないの?」


と。


私は幼い頃から、オバケ=魂だと思っていたので。

義父は、アハハ、と笑って私のその質問にちゃんと返してくれなかったけど。


私的に、オバケがさらにそうやって魂を吐くという事は、二度死んでいるのか?と、今だに疑問だ。