「んー、川邊部長とは仕事上は話してたけど。
後、周りに誰も居ない時とか…」


何処か平井さんは、少し言いにくそうで。


「誰も居ない時?」


「うん。川邊部長、自分には関わらない方がいいって散々俺らに言ってるから。
だから、今もこの部屋から出たら、俺ら川邊部長にこんな風に話し掛けたりしないから。
梢ちゃんも色々聞いてたでしょ?
川邊部長、この会社で有名人だから」


平井さんの言葉に、色々と、ああそうか、と思った。


この平井さんもそうだけど、篠宮君も岡田さんも、食堂によく来て居るけど、
篤さんと離れて座り。

こんな風に話している所を見た事がなかった。


現に私も、篤さんに言われた事有ったな。


"ーー俺と関わったら、お前迄会社の奴に色々と言われるぞーー"


「俺は川邊部長の噂とか入ったばかりでよく知らないままこの部に入れられたけど。
梢姐さんの事見てたら、確かにあんまり川邊部長と仲良くしない方が良さそうだよね」


そうかぁ。


この篠宮君は、篤さんの噂だけじゃなくて、私の事も聞いていて。


私が庶務課でそんな風に居づらくなっている事も、知っていたんだな。


大方、篠宮君がそれを篤さんに言ったのかもしれない。


もしかしたら、篠宮君以外のこの部署の他の誰かかも。


篤さんと結婚してから、私が篤さんの噂を全然聞かなくなったように、
篤さんも私の噂は聞いていないだろう。


だから、誰かから聞かないと、私のその庶務課での状況は知らなかったはず。


先程の岡田さんが何かを言い掛けて、篤さんが遮ったのも。


私に気を使い、その事を蒸し返さないように。

この部署の人達全員、私が何故ここに来たのか本当の所を分かっているのだろうな。