もう何日
あたしに対する先生の笑顔を見てないんだろう。
もう何日
”なっちゃん”って呼んでもらってないんだろう。
それを思うたびに
あたしの世界は滲んでゆく。
あたしがこんなに泣き虫になったのは
絶対、先生のせいだと思うんだ。
「…行こ」
持っていた布を扉の前に置くと
あたしは職員室へと歩き出した。
「失礼します…」
先生の席から遠い方の入口から
そっと中を覗き込む。
…あれ?
先生、いない?
キョロキョロと中を見渡してみたが
先生の姿は何処にもなかった。
教室に行ったのかな。
運のいいすれ違いに
ほっと胸を撫で下ろしてから
あたしは中へと入った。
「ん?どうした?」
入って来たあたしに気がついたのは
ほとんど関わりのない3年担当の櫻井先生。
一昔前のイケメン、なんて言われてる
甘いマスクの、でもどこか80年代の空気を漂わせている
おじさん先生だ。
「被服室の鍵を借りたいんですが…」
そんな櫻井先生に、そう遠慮がちに尋ねると
「あぁ、衣装ね」
納得したように呟いて、鍵を取りに行き渡してくれた。