「…あいつの何処がいいわけ？」



呆れたような拓哉の声に

あたしは恐る恐る顔を上げる。



案の定そこには

見下すようにあたしを見ている拓哉がいて


なんだかすごく息苦しい。





「俺のこと

好きになれない？」



何も答えないあたしに

拓哉は仕方なくといった感じで質問を変えた。



「ごめんなさい」



その質問にはすぐ答えて、頭を下げる。



そんなあたしに対して



「そこ、即答するとこじゃなくね？」



拓哉は渇いた笑いを零した。







だって…



”好きになります”

そう言って好きになるのって

なんか違うでしょ？



好きになるのに

理由なんているのだろうか。






”何処”なんてあるのだろうか。






あたしは

先生を好きだと思った。



先生以外の誰かを想えるの日なんて

来るのだろうか…



そんな事を

本気で思ってしまうほどに。





それに

拓哉がこれ以上

あたしなんかを想わないためにも


中途半端なことはしたくなかったんだ。