鼻の奥がつんとしたのと同時に
ポロポロと零れ落ちる涙。
ぼやけた視界に映る先生は
一瞬顔を歪めたように見えたけれど
いつかのように
あたしの涙を拭ってはくれなかった。
「もういいよ…」
精一杯搾り出した声は
自分のものとは思えない程かすれてしまう。
…あたし、間違ってるのかな。
ただ、沙来の幸せを壊したくないって思っただけなのに
沙来に幸せになってもらいたかっただけなのに
どうしてこんなことになってるんだろう。
先生の気遣いを、大切にしようって思ってるんだよ。
拓哉の決意を、受け止めてあげようって思ってるんだよ。
でも、あたしだけが幸せを受けるべきでもない。
みんなに、
幸せになる権利はあるはず。
そうだよね?
間違ってないよね?
…ねぇ、先生。
そんな目で、見ないでよ。
辛いよ