彼女はただ
拓哉を見ているだけ。
だけどあたしには
それだけで十分だった。
彼女の言いたいことが
十分わかってしまった。
「神谷くんと、付き合ってるの?」
「……っ」
あたしの顔を見ずに
拓哉を見つめたまま
宮城さんは呟く。
小さな、でもハッキリとした声に
あたしは犯罪がばれたかのような感情に陥った。
悪いことなんて、何もない。
だけど、自分がしていることがすごく悪いことに思えて
フラフラと視線が泳ぐ。
「…付き合ってないよ??」
やっと出た声は
カラカラに渇いたのどから
絞り出したようなか細いもの。
あたしの言葉に
宮城さんはこちらを向く。
「だよね。
なら、どうして?」
あまりに優しい微笑みに
泣きたくなった。
もし彼女が
自らを取り乱してあたしを責め立ててくれたなら
あたしはいくらでも反抗できる。
…なのに、どうして。
どうしてそんな風に聞くの??