「いますよー!」


先生は椅子から立ち上がりながら

扉に向かって声をかける。



ガチャリと開いた扉の向こうにいたのは

学年主任の菜畑先生。



「神谷が来ましたよ」


菜畑先生はそう言いながら

あたしと高田先生を交互に見て


「楽しい時間だったみたいだね」


意味深に笑った。



「ええ。

那智は本当に面白いんですよ」



菜畑先生の言葉の意味を

すんなり解釈したらしい高田先生は


まだ椅子に座るあたしを振り返ると

優しく微笑む。



「そうかそうか。

じゃあ今度、僕とも色々話しようか」



高田先生の言葉に

菜畑先生もあたしを見て微笑んだ。



菜畑先生は

1年の時に授業を受け持ってもらっていて

面識はもちろんあるのだが


そこまで親しかったかと言えば

そうでもなくて


だから、そんな風に微笑んでくれたのには

多少なりとも驚いてしまう。




「あ、こんなことしてたらダメだね。

神谷を待たせてるんだった」




はっと気付いたように

菜畑先生がそう言ったのを機に


あたしたちは職員室を後にした。