………なんて、ね。



何を馬鹿げた事を考えてるんだろう。



恋する乙女みたいなことを

一瞬でも思った自分が笑えてくる。



先生は、そんな人じゃない。


生徒に対して

誰かを特別に思ったり

誰かを嫌だと思ったり


そんな感情を持つような人じゃない。



何考えてんだろう。



そんな気持ちは

自嘲気味な笑みとして零れたようで



「…え?

どうした??」



戸惑いの色が滲み出る先生の声を聞いて

自分の情けない笑いに気付いた。



「何がですか?」


わかってるけど、惚ける。


理由なんて言えないから。



「なんか今、泣きそうな顔しんかった?」



体をかがめて

あたしに近づいた先生に


思わず少し後ろに下がってしまった。



それに気付いたのか

先生は少し眉を潜める。



「あ…

いや、なんでもないですから!」



いろんな意味を込めて

あたしは顔の前で両腕を左右に降る。