「えりか、
あなたは勘違いしてる」
はっきりとそう言った母に
驚いて目を見開いてしまった。
「…勘違いって、どうして?
あたし、何を間違えてる?」
驚きから
声が震えてしまう。
そんなあたしに
母は、ふっと微笑んで
「たしかに、あたしもパパも
仕事が好きだし、大事だし
毎日頑張ってるわ。
…でも、この世で1番好きなのも
大事なのも
えりかなのよ?」
そっと腕を延ばし
あたしの頬をなでた。
「えりかに不自由になってもらいたくないから
えりかに少しでも
幸せになってもらいたいから
仕事を頑張ろうって思う1番の理由は
それなの」
頬を撫でていた手が
あたしの目じりを拭った。
それで気付く。
自分が泣いていたことに。