…そんな目で、見ないでほしい。
先生からの視線が嫌で俯いて
膝の上に置いていた手を
ぎゅっと握りしめる。
言わなかったんじゃない。
言えなかった。
だって……
「えりか、ごめんね…」
響いた弱々しい声に
はっと我に帰る。
声のした方を見れば
母が目にいっぱい涙を溜めて
あたしを見下ろしていた。
「…言えなかったんだよね…
あたしが、仕事ばっかだったから
気を使ってくれてたんだよね…」
今にも零れ落ちそうな涙を
精一杯堪えながらそう言う母は
痛々しくて
切なくて。
何も言えなかった。
こんな弱々しい母を見たのは
初めてだったから。
いつでも凜として
「カッコイイ」と言われるような
母だったから。