「え…?
どう、して??」
まさか母がいるだなんて
思ってもみなかったあたしは
動揺を隠せずうろたえる。
そんなあたしに
「とりあえず、そこに座りなさい。」
先生は真面目な顔で
母の座る隣の椅子を指指した。
言われた椅子に腰掛け
母を見た。
動揺しすぎて気付かなかった。
隣に座ってみて、
初めて気付いた。
母の濡れた頬に。
潤んだ瞳に。
真っ赤な鼻に。
泣いたの?
そう聞こうと試みたけど
喉が震えて
何かが怖くて
あたしはそんな母の横顔を
眺めることしか出来なかった。
「なっちゃん。
お母さんに、全部話したからな?」
そんなあたしに
優しく声をかけたのは
机を挟んだ向かいに腰掛けた先生。
「…本当に、親には何も
言ってなかったんだな。」
先生は悲しげに
あたしを見つめていた。