「…今、なんて言った?」
あまりに自然に流れた言葉を
あたしは理解しきれず聞き返す。
「だから、俺が終わるまで
職員室で高田と待ってて?」
…聞き間違えじゃなかった。
想定外の言葉に
あたしは目を見開き固まる。
そんなあたしを見て
「高田のやつ
お前が心配で仕方ないんだな〜」
ってニヤッと笑う。
拓哉の表情に
顔がかぁっと熱を持ったのを感じた。
彼の言葉に
深い意味なんてない。
頭ではちゃんとわかってるのに
体は素直に反応してしまって
―この学校の中では
あたしは先生の特別―
そんな想いが
あたしの体の中で疼く。
「…えりか、お前さ…」
急に真顔になった拓哉の顔に
嫌な予感がした。
「…いや、なんでもない。」
少し何かを考えてから
そう静かに笑った拓哉は
なんだか淋しそうだった。