「よし」
心がしっかりと落ち着いととこで
あたしは家事に取り掛かった。
ご飯を作って食べ
お風呂に入り
少しだけ勉強をする。
「ただいま〜!」
時刻が11時を過ぎた頃
母が帰ってきた。
思わず勉強していた机から立ち上がり
玄関へと向かう。
「おかえり!」
そう声をかけると
「出迎えなんて珍しいね?
なんも買ってきてないよ??」
そう母は笑った。
「なんとなくだからっ」
とあたしも笑った。
言えない。
何かがあったわけじゃないから
言えるわけがない。
帰宅が怖くなった、なんて。
きっとあたしがそう言えば
母は心配してくれるだろう。
仕事を早く切り上げたり
してくれるだろう。
……だからこそ、言えない。
母がどれだけ仕事が好きか
誰よりも分かってるつもりだから…。