「なっちゃん、クロワッサン好きそうだったからさー」



そんなあたしに先生はニヤリと笑う。



その笑顔を見た途端

頭の中に、辛かった日々が走馬灯のように浮かんでは消えていった。



あたし、辛かったんだよ?



すごい寂しかったんだよ?



先生のせいで、

何回泣いたと思ってるの??





「先生のばかぁ…っ」





怒ってやるつもりだったのに

あたしの口から零れた台詞は

あまりに弱々しくて。



それと同時に溢れた涙。



泣くつもりなんてなかったのに。





「ごめんな」





あたしの涙を見た先生は

苦しそうに顔を歪めて

俯きながら呟く。



「俺、教師失格だよな」



それから

ははっと自嘲気味に笑った先生に

ぎゅっと胸が痛んだ。





「なっちゃんが、あまりに自分のこと大事にしないからさ?

神谷とか宮城とか

他人の事気にしすぎてて

なんか無償に嫌だった」