「行ってくるね」

そう言って家を出た母が、家に戻ることは無かった。

勉強、勉強、と口うるさかった母に、私はうんざりしていた。

「うるさいな!私は私のやりたいようにやるの!」

喧嘩したまま。

謝ることもできないまま。

私は、汚れ1つ付いていない新品の制服に袖を通す。

手には母が昔作ってくれた、ビーズでできた恐竜のキーホルダーが付いた鍵。

部屋には、灰になった線香の香りが残っていた。