「え?」
「僕が僕の人生をあげたら、今度こそ僕の事を好きになってくれる?」
「何言って……」

何を、言っているのだろう。
僕の人生をあげる……だと?
どういうつもりで、この言葉を使ったというのか。

「それって、私の代わりにあんたが死んでくれるの?」
「君が望むなら」

かつて、自殺するの言った彼の表情は、まだどこか冗談だと思わせてくれる余裕があったけど……今は違う。
本気なのが、ひしひしと伝わってくる。
冗談など入る余地など、微塵も無かった。

「……馬鹿なこと言わないで」
「うん、馬鹿な事だと思うよ。だからね」

そう言うとすぐ、奴は突然私の唇を奪った。
舌を絡めるような激しいキス。
息が、生命力が全て吸い取られてしまう。
ここで殺されてしまっても良いんじゃないか。
食べられるように何度も唇を合わせて、互いに名残惜しそうに離す。

「僕が君を治す」
「……は?」
「来年、僕はアメリカの大学に飛び級入学が決まってる」
「知ってるよ」
「じゃあこれは?僕は医学部に入る。専門は脳外科」
「え?」

こいつは今なんて言った。
私の為に自分の人生の進むべき道を決めてしまうというのか?

「私、もうすぐ死ぬんだよ」

宣告された日までは残り2か月を切っている。

「来年なんて、私生きてないよ」
「死なせないから、絶対」

そう言うと、奴はアメリカの病院のパンフレットを渡してきた。
Brainという単語だけしか意味は理解できなかったけど、それが何を意味しているのか、私には痛い程伝わってしまった。

「どうして……こんな……」