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 それから数日後、芹花は愛瑠と一緒に本屋に立ち寄っていた。棚に並べられて本を眺めていると、大好きな人の顔が……。

 えっ……。

 凰雅さん?

 目に飛び込んできたのはビジネス雑誌だった。表紙には最近やっと見慣れた凰雅がこちらを見つめていた。

「凰雅さん!!」

 芹花の声で雑誌に気づいた愛瑠も驚いたように声を上げた。

「ひえー、凰雅さんてこんな雑誌に出ちゃうような人なんだ。芹花知ってたの?」

 いや知らない。こんな雑誌があることも雑誌に載ることも……。

 凰雅さんが急に遠い存在のようになってしまった気がした。

 雑誌の中でキリッとこちらを見つめる凰雅さんは、私の知っている凰雅さんではないように思えた。



 その夜、本屋で買ったビジネス雑誌を見ながら芹花は思っていた。私みたいな学生と凰雅さんでは釣り合いがとれないのではないかと……。

 芹花は前世での記憶を思い出したと言っても断片的でどのように『オウガ』と過ごしていたのか細かいことは思い出せなかった。

 もしこの断片的な記憶が偽りだったら……芹花の思い込みによるものだったら……。凰雅さんは私に背を向けて行ってしまう?

 離れて行ってしまう?

 怖い。

 芹花の瞳から涙が頬をつたって流れ落ちていた。