*土曜日*~

 芹花は凰雅に誘われ、待ち合わせ場所である駅前にやって来た。

 初めてのデート……。

 デートでいいんだよね?

 昨日からやたらとソワソワしてしまって、あまり寝ていない。朝も早くからデート用に買った水色の清楚系ワンピースに着替え、髪もハーフアップにした。

 こんな感じで大丈夫かな?

 凰雅さんもう来てるかな?

 辺りをキョロキョロしながら歩いていると、凰雅が数人の女性に囲まれているのが目に飛び込んでくる。

「お兄さん一人ですか?良かったら私達と遊びません?」

「悪いが待ち合わせをしているんだ。邪魔をしないでもらいたい」

 そう言った凰雅の瞳がキラリと光ったような気がしたのは気のせい?その瞳は冷たく回りを射貫くようで、凰雅の様子を遠くから見守っていた芹花の喉が鳴った。

 口角は上がっているが、あれはけして笑ってはいない。

 このまま近づいて良いものか芹花が考えあぐねいていると、それに気づいた凰雅が手を振り近づいてきた。先ほどの眼光が嘘の様に笑いかけてくる凰雅の姿に呆気にとられてしまう。

「芹花、会いたかった」

 そう言って抱きしめられ、芹花は焦った。

 それを見ていた女性達が「キャーー!!」と、悲鳴のような声を上げている。それは辺りに響き渡り、先ほども注目を集めていた美丈夫の凰雅の行動に、目をハートにしていた女性達の注目が更に集った。


「凰雅さん、みんなが見ています。ちょっと離れて下さい」

「それは無理だ。俺は芹花と一秒でも長く一緒にいたい。離したくないんだ。ダメか?」

 眉を寄せる凰雅の姿に、芹花の胸がキュンキュンと高鳴り、胸をしめつける。

「あ……いえ、ダメではありません。その……私も凰雅さんと……ずっと一緒にいたいです」

 真っ赤な顔で答える芹花。その声は最後の方が消え入りそうだったが、凰雅には伝わったようだ。それはそれは嬉しそうに笑っていたから。

「芹花、行こうか」

 差し伸べる大きな手を芹花は握りしめ大きく頷いた。