従順になったわたしに、景野さんは再度話し始める。
「僕たちが牙城クンを痛めつけているあいだ、彼はまったく抵抗しなかった。ボロボロになって意識が飛ぶまで、やられっぱなしだった。
……本気で【狼龍】も落ちぶれたと思ったよ」
危険、怖い、恐ろしい。
いまではそんなふうに噂されている彼に、そんな時期があったなんて、わたしは知らなかった。
「……でも、そんなときに、ナナがやってきた。ひとりで何も持たずに颯爽と現れ、『ナギ、もういいよ』なんて言うんだ。当然、僕たちはなんの話かわからない。
こんなところに華奢な女がやってきたというだけで、意味不明だ」
「……」
灰色に包まれた【相楽】のアジト。
ボロボロになった傷だらけの牙城くん。
血が飛び散る巣窟。
そんなところに……、ひとりやってきた七々ちゃん。