くつくつと笑う景野さん。
赤みが増した瞳は、薄暗い空間で、蛇のように光らせていた。
牙城くんを怖いという割には、この状況を楽しんでいるようにみえる。
牙城くんが来るのが、嬉しくて仕方がないというように。
……【狼龍】を、潰したくて仕方がないとでもいうように。
「牙城クンの唯一の弱点は、きみだってこと。
……もし、僕がモモちゃんの肌に傷ひとつでもつけたら……あいつはどうなるんだろうねえ?」
わざとらしく、わたしの頰に爪を立てる景野さん。
ピリッとした痛みに、思わず顔を歪めると、彼は手を放した。
「おっと、僕好みの綺麗な顔に傷つけるのは、まだ早いかな」
あなたの好みなんて……、しらない。
そもそも、わたしなんてどうでもいいくせに。
「あなたが……、本当に欲しているのは、七々ちゃんでしょう」