ピリついた雰囲気に感化され、無意識のうちにポケットに手をやる。
……そういえばタバコ。小羽に取り上げられてからはやめたんだっけな?
まあ、いいや。
コイツの顔見りゃ、次第に落ち着くだろ。
そう思いながら、カチコチと固まる小羽の雰囲気を和らげようと、軽く頬をつまんで、正月の出来立てのモチの様に伸ばす。
「えっ……いひゃい、なに」
「表情固い。もうちょいリラックスしろ」
「この状況でそれは無理だよ……」
「俺がいるから心配ない。」
「……一気に不安になってきた」
相当美喜矢が怖いのか、さっきから俺の顔をジッと見つめたままの小羽。
助けを求められてるみたいで悪かねぇな。
「それで?だからって普通ここに女入れる?あり得ないんだけど。
それに絡まれた時にその女が割り込んでこなきゃ、左和季ひとりでやれたでしょ?」
「……」
まあ、そうだけど。
「……助けてもらったのは事実だ。
あそこはすぐ近くに建物があるからなー、騒ぎにならならずに済んでよかったわ。」
「……なにそれ左和季らしくない。
頭おかしくなったんじゃないの、もしかしてこの女のせい?」