しばらくして見えてくるマンションに安堵する。
左和季君と一緒だと、さっきまで怖がっていた夜道だって、いつの間にかへっちゃらになっていた。
ふと、マンション近くに停めてある赤いバイクが目に入る。
誰のだろう?と、ジッと見ていると、私の視線をなぞった左和季君が「俺のだ」と、言葉に出していないのに返答してくれる。
「左和季君の?、なんで私のマンションの近くに置いてあるの」
「鈍いな、お前も。そんなの小羽に会いに来たに決まってんだろうが」
「へっ?」
「……つっても、連絡先知らねーし、ここのマンションオートロック式だろ?
部屋の前まで行けるわけねーから、諦めて帰ろうとしたところを絡まれたってわけだが。」
「……」
「さすがに人目がつくところで喧嘩なんかしてたら通報されんだろ?
人通りの少ない道に移動して小突き合いしてたら……お前に遭遇ってわけだ。
この間からタイミングが良いな、お前実は狙って俺の目の前に現れてるだろ」
小突き合いって。
どう見ても相手の方がやられてたんだけど。
そこはツッコんだら負けなような気がして諦めた。
「別に狙ってないよ!
てか、あの。私に会いに来たって……」