見るからに胸ぐらを掴まれている男の人は怯えていた。



見過ごせなくて、慌てて自転車からおりる。


勢いよく左和季君の腕を掴んで止めにはいった。



「左和季君……!暴力は駄目だよって……きゃっ!」


「おっと」


ーードサッと、体のバランスを崩した私を受け止める左和季君。




せっかく助けてあげたのに。


男の人は私が割り込んできたのをいいことに、私を左和季君の方に向かって物を投げる様に思いっきり押し、バタバタと全速力で逃げていく。



男の背中が見えなくなるまで、ポカンとまぬけ面で細い道の暗闇すら見つめていた。



「……な、なに。……ねぇ!なんで私あの人のこと左和季君から助けてあげたのにお礼も言わず逃げていっちゃったの!?
 それに押されたし」


「おい、まるで俺が悪者みたいな言い方だな」


「違うの……?」


「違う。あいつが絡んできたから相手してやっただけだろ。
 つか……あの男にお前の顔見られちまったじゃねーか」


「左和季君、いくら私の顔が整ってないからってヒドイ言い草だね」


「あ?……いや、お前可愛いだろ。」


「え」



そんなハッキリ言われると照れちゃうじゃん。


もう左和季君ってば、嘘つけないんだから。