諦めていない男は左和季君に向かって拳を突き出そうとするが。
左和季君はそれが分かっていたみたいで、殴られる前に長い足で男の腕を踏んづける様にして手すりに押さえつけた。
「……っ」
「こっちは小羽拉致られて機嫌悪いどころじゃねーつのに……そんなに俺を怒らせたいわけ?」
「……」
「黙って歩け。……外にいる有栖川も取り巻きも全員捕まえた。
お前だけが逃げるなんて絶対に無理な状況だ、いい加減諦めろ」
ここに来たのが左和季君だけじゃないことを知り、男は肩を落とすと、観念したのかゆっくりと歩き出す。
外に出ると、蛇狼の人達がすぐさま元瞑静の総長を取り押さえ車の中へと押し込んだ。
……なんか、刑事ドラマ観てるみたい。
男が乗る車を見えなくなるまで目で追っていると、左和季君が口を開く。
「大丈夫か」
「あっ、うん!大丈夫だよ?」
「水は?どっか怪我してるなら言えよ、小羽は隠すから……不安だ」
「……っ、大丈夫」