「完全に腰抜かしてんな」


「だ、だって……!」 


「いや、逆によくここまで持ちこたえたわ。
 ほら、俺の背中乗れ」



左和季君が私に背中を向ける。


本当はこんなところでおぶられるなんて、ちょっと恥ずかしいけど。


今の私じゃ左和季君の支えなしでは立てられないから、お言葉に甘えて左和季君の背中に「えいっ!」と飛び込んだ。



「まーた、落ちんなよ?」


「左和季君の意地悪……」


「違う、確かめてんだよ」


「……確かめる?」


「お前が俺の側にいることを。」




そう言って左和季君は突き刺す様に、階段の先を睨んだ。



左和季君と目が合った男は、「……っ」と逃げられない状況に息を呑む。