まさか小羽じゃなくて有栖川がこんなところにいるとか……誰が思う。


深いため息が、冷えた廃墟に響く。




「なんで私がこんなところにいるかなんて……それはこっちの台詞」


「は?」


「五月女君の女と間違えられて、私瞑静の奴らに無理矢理こんなところに連れてこられたんだから」



「……」



意味が分からない。


小羽と有栖川じゃ、似ても似つかないだろ。


それに小羽の顔なら、元瞑静の奴らも知ってるはずだ。


雪紅の総長と間違えるとか、それこそありえねぇ話だ。



「いつからお前、俺の女になったんだよ」


「知らない。……あっ、でも、もしかするとあの時勘違いされたんじゃないかしら?」


「あの時?」


「五月女君が族狩りに襲われそうになった時、私が助けたでしょ?」


「あぁ、お前が俺らの邪魔をした時か」



「五月女君ってほんとつれないわね」