不安だけを残して、店内から出る有栖川さん。



「……」



左和季君が族狩りに襲われそうになってたって。


そんな話、私聞いてない。


それに……その時助けたのが有栖川さんだなんて。


「……って、だめだめ!」



左和季君が無事ならそれでいいじゃん。


嫉妬なんてよくない。


でも……やっぱり左和季君の口から聞きたかったなぁ。


きっと私が心配すると思って言わなかっただけなんだろうけど。



そもそも左和季君のことだから、そんなに自分が襲われたこと気にしてないのかも。



「も、もう!やっぱり私のことだけじゃなくて自分のことももっと気にしてよ!!」


「あの……いいですか?レジ」


「あっ、はいすみません!
 いらっしゃいませ!!」



バイト中なのに、有栖川さんの言葉にばかり気を取られて
お客さんが並んでいたことにまったく気づかなかった。



……惑わされちゃ駄目。



気になるなら私から左和季君に聞かなきゃ。



できるだけ考えないようにして、レジをさばきながら、今日はいつもよりバイト終わりが待ち遠しかった。