「ぎゃ……っ!?」


何かに躓いて後ろに体重の重心が傾いた。

コケる!というのは分かっても、それに体が対処しようと上手くは動かない。……これが歳ってやつだ……。

だからもはや、ただひたすら恐怖に目を瞑ることしか出来ない。


だけど…………今回は違った。

目を瞑る前に木嶋さんに引き寄せられ、気づけば腕の中にいた。

ドキドキと心臓が加速する中、木嶋さんのため息が鼓膜を振動させる。


「ほんと、今日何回転けそうになったら気が済むんすか……」

「ご、ごめんなさい…」


木嶋さんの呆れ声にいたたまれなくなって、そう急いで謝れば、不意に腕から解放された矢先、顎をクイッと持ち上げられた。

そして鼻と鼻の距離が2センチもないくらいまで私に顔を近づけた木嶋さんは、悪戯っぽく笑みを浮かべる。


「やっぱりかわいいですね」

「……っ!」