ある程度オフィスルームから離れると、私から手を離すのと同時に、木嶋さんは私の方へと振り返った。
「急にすみません。顔色悪いのが気になって」
そう言って私の顔を心配そうに見つめる木嶋くんは本当に優しい人だ。
やっぱりお腹痛いだなんて嘘だったんだなと、ちょっと笑いがこぼれた。
「助かりました……かなり」
不思議だ…木嶋さんといるとなぜか気持ちが安定していく。今だって、いつの間にか手の震えも止まってるし……。
「そっか…それはよかったです」
なんて木嶋さんはハニカむ。
急に敬語に改まったのは、私が上司だと意識しているからだろう。……何だか距離が遠くなってしまったような気がして寂しい、だなんてこれっぽっちも思ってはいないが。