~第4章~忘れていた手段

そういえば、私は、前の章で手段がないと言っていたわ。
でも、1つだけあることに気づいたの。
それはね、彼からの手紙を読み返すこと。処分するのもあれだから、
取っておいたの。机の中を探って1通の手紙を開く。覚悟を決めてそう。心臓の鼓動がどんどん大きくなった。手紙の内容を紹介するわ。

アムネジア。その名も記憶喪失。俺との記憶を全て忘れてほしい。思い出したら、
嫌になるかもしれないだろ?

すごい、意味が深い。今で言う意味深?って奴かな。流行語は学んでる方。

心配してんのか、謎に怒ってんのか。そういうのが彼なのよ。全くもうモヤモヤさせるのよね。たくもう、呆れるわ。疲れるのよね。なんでつきあってたんだろ。
今しかこんなこと言えないけれど。
そして。月日が経つごとに彼以外のひとの記憶を失った。
 部屋にある彼からもらったアムネジアがかれて散れば彼の記憶を忘れられるのに
アムネジアはなかなか枯れない。それはなぜ枯れなかったのかは考える余地がなかった。
彼の愛がおかしいことに何故気づかなかったのか。手紙がおかしいことに気づかなかったのか。別れたのに心配しているのよ。どういう愛なのか、それは誰もが私も、彼の家族もわからない謎だった。その謎が解けるのはただ1人、彼だけだった。
ような事をひとりでぶつぶつ言って、お母さんに何話してるのって言われることもある。私の友達が言っていたわ。
「無理して忘れようとすると忘れられない」
じゃあ、どうやって忘れればいいのよ。って。
その答えはただひとつ。
「月日が経つまで待つ」
それしかなかった。私はそう思うと一日がとても長く感じた。片隅に彼がいてもいなくても
物事に必死に取り組むし、友達との記憶を思い出していき、愛、ということを大切に考えた。
時には「愛」一つの言葉の重さを知ったり、
時には愛という言葉を調べることだってした。
考えていると、1日が終わってる日曜日も、
私は決して彼との間にある愛を潰したくなかった。儚く、脆いものにしたくはなかった。
それだけは自分に誓っていた。
どんな日でもどんなに辛くても、
幸せでも_________.