電車は僕の見た事のない風景を見せてくれた。
僕は美涼と車窓から見える景色を眺めては指をさし、ああでもないこうでもないと話しをしている。
そして、何度か乗り換えをして、二時間半ほどで目的地へと着き、駅舎を出るとそこには海が広がっていた。
まだ九時前だと言うのに海は直視出来ないほど、太陽の光りを反射してきらきらと輝いている。
美涼が僕の手を引っ張り防波堤まで連れて行く。
「海だね」
空から照りつける太陽に負けないくらいに明るい笑顔で僕へ笑いかけると、海へと視線を向け眩しそうに目を細めて眺めている。
しばらく二人で海を眺めていた。
すると美涼はまた、僕の手を引っ張り歩き出した。
海沿いの歩道を二人で手を繋ぎ並んで歩いていると、寄せては返す波の音がとても心地よい。
そして、二人でK海岸にある観光名所を回り、ふわふわのかき氷を食べ、海岸におりて海を眺めながらパン屋さんで買ったパンを食べた。
パンを食べ終わった美涼がサンダルを脱ぐと波打ち際まで歩いていき、海の中へと入っていく。
「圭太君、気持ち良いよ」
片手でスカートの裾を膝の高さまで上げ、もう片方の手で僕へと手を振っている。僕も靴を脱いで美涼の元へと走っていき、海の中へと足をつけた。
「ね、気持ち良いでしょ?」
とても楽しそうに笑う美涼がくるりと沖の方へと向た。僕もその隣へと並び、一緒に沖の方を見た。
遠くに船が見える。
「あの船、ここから見るとあんなに小さいけど、近くで見るととても大きいんでしょうね」
「貨物船かな?」
のんびりとした時間が流れていく。
美涼と二人きりで過ごす。ただ、それだけでも楽しかった。
それからも色んな場所に行き、色んなものを食べ、またのんびりするを繰り返した。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。気がつくと午後六時になっていた。
「今日は遅くなるって言って来たから大丈夫」
美涼はそう言うと、近くのコンビニに僕を誘い、そこで花火を購入した。
そして、駅近くの砂浜へと戻ると、さっき買った花火を取り出し僕へと渡してきた。
「海と言えば……花火でしょ?」
午後七時をまわった頃には、空も少し薄暗くなってきている。美涼は自分の花火に火を着けると、まるで小さな子供の様にくるくると回しながら楽しんでいる。
僕も渡された花火に火を着けた。
辺りがぱぁっと明るくなる。
いくつかの花火を終えた時だった。
遠くの方から雷が落ちた様な音と共に、夜空が明るくなった。この近くで花火大会が開催されている事に僕らは気がついた。
夜空に大輪の花を開かせては儚く消えていく。
僕と美涼は買った花火をするのをやめて、砂浜に並んで座り打ち上がっては消えていく花火を静かに見ていた。
「私ね……夏休みが終わる前に引っ越すんだ」
花火から視線を外さずに、美涼がゆっくりとした口調で僕へと話し掛けてきた。
「……え?」
突然の美涼の言葉に僕は驚いた。
しかし、美涼は淡々と話しを続けていく。
「お父さんの急な転勤でね……今度の出校日に皆には伝えるつもり」
「圭太君は私になんで旅に誘ったのが僕なんだって言ったよね……」
「私ね……三年生になる前から……ずっとずっと、圭太君の事が好きだったのよ」
「だから……引っ越す前に圭太君との思い出が欲しかった」
僕は思わず美涼を抱きしめていた。
びくりと美涼の体が強ばった。しかし、直ぐに力が抜けると美涼も僕の背中へ腕をまわす。
「こんな事されると……私、勘違いしちゃうよ」
「良いよ……美涼からなら勘違いされても……それに、僕の美涼への思いは……勘違いじゃないから」
「圭太君……」
僕の胸の中に顔をうずめている美涼は、静かに声を押し殺し泣いていた。
そんな美涼を僕は黙って抱きしめる事しか出来ない自分がとても弱く、中学生という子供である事に対し初めて悔しく思った。
僕は美涼と車窓から見える景色を眺めては指をさし、ああでもないこうでもないと話しをしている。
そして、何度か乗り換えをして、二時間半ほどで目的地へと着き、駅舎を出るとそこには海が広がっていた。
まだ九時前だと言うのに海は直視出来ないほど、太陽の光りを反射してきらきらと輝いている。
美涼が僕の手を引っ張り防波堤まで連れて行く。
「海だね」
空から照りつける太陽に負けないくらいに明るい笑顔で僕へ笑いかけると、海へと視線を向け眩しそうに目を細めて眺めている。
しばらく二人で海を眺めていた。
すると美涼はまた、僕の手を引っ張り歩き出した。
海沿いの歩道を二人で手を繋ぎ並んで歩いていると、寄せては返す波の音がとても心地よい。
そして、二人でK海岸にある観光名所を回り、ふわふわのかき氷を食べ、海岸におりて海を眺めながらパン屋さんで買ったパンを食べた。
パンを食べ終わった美涼がサンダルを脱ぐと波打ち際まで歩いていき、海の中へと入っていく。
「圭太君、気持ち良いよ」
片手でスカートの裾を膝の高さまで上げ、もう片方の手で僕へと手を振っている。僕も靴を脱いで美涼の元へと走っていき、海の中へと足をつけた。
「ね、気持ち良いでしょ?」
とても楽しそうに笑う美涼がくるりと沖の方へと向た。僕もその隣へと並び、一緒に沖の方を見た。
遠くに船が見える。
「あの船、ここから見るとあんなに小さいけど、近くで見るととても大きいんでしょうね」
「貨物船かな?」
のんびりとした時間が流れていく。
美涼と二人きりで過ごす。ただ、それだけでも楽しかった。
それからも色んな場所に行き、色んなものを食べ、またのんびりするを繰り返した。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。気がつくと午後六時になっていた。
「今日は遅くなるって言って来たから大丈夫」
美涼はそう言うと、近くのコンビニに僕を誘い、そこで花火を購入した。
そして、駅近くの砂浜へと戻ると、さっき買った花火を取り出し僕へと渡してきた。
「海と言えば……花火でしょ?」
午後七時をまわった頃には、空も少し薄暗くなってきている。美涼は自分の花火に火を着けると、まるで小さな子供の様にくるくると回しながら楽しんでいる。
僕も渡された花火に火を着けた。
辺りがぱぁっと明るくなる。
いくつかの花火を終えた時だった。
遠くの方から雷が落ちた様な音と共に、夜空が明るくなった。この近くで花火大会が開催されている事に僕らは気がついた。
夜空に大輪の花を開かせては儚く消えていく。
僕と美涼は買った花火をするのをやめて、砂浜に並んで座り打ち上がっては消えていく花火を静かに見ていた。
「私ね……夏休みが終わる前に引っ越すんだ」
花火から視線を外さずに、美涼がゆっくりとした口調で僕へと話し掛けてきた。
「……え?」
突然の美涼の言葉に僕は驚いた。
しかし、美涼は淡々と話しを続けていく。
「お父さんの急な転勤でね……今度の出校日に皆には伝えるつもり」
「圭太君は私になんで旅に誘ったのが僕なんだって言ったよね……」
「私ね……三年生になる前から……ずっとずっと、圭太君の事が好きだったのよ」
「だから……引っ越す前に圭太君との思い出が欲しかった」
僕は思わず美涼を抱きしめていた。
びくりと美涼の体が強ばった。しかし、直ぐに力が抜けると美涼も僕の背中へ腕をまわす。
「こんな事されると……私、勘違いしちゃうよ」
「良いよ……美涼からなら勘違いされても……それに、僕の美涼への思いは……勘違いじゃないから」
「圭太君……」
僕の胸の中に顔をうずめている美涼は、静かに声を押し殺し泣いていた。
そんな美涼を僕は黙って抱きしめる事しか出来ない自分がとても弱く、中学生という子供である事に対し初めて悔しく思った。