「ところで西嶋……」



「なんですか?また書類にミスでもありました?」



「あぁ、あれか……いやあれは大丈夫……って違ぇよ!!仕事の話じゃなくて!!」



ん???
こんな慌てふためく部長は
初めてかもしれない



「さっきの話……本当なのか?」



「さっきの?露人くんの話ですか?」



「それだ。市倉が言うなら嘘ではないんだろうが……」



「部長、それは私が虚言癖だとでも言いたいんですか?」



「あっ、いや、違う!!そうじゃなくて……その付き合うのか?」



「は?」



たどたどしい態度で
声も小さくはっきりしない。



いつもの部長と様子が違うのは明らかだ。



「どうなんだ?」


「いや……そこまではまだ。というか自分でもまだ信じきれてないっていうか……。」



そんな部長につられて
こちらまでオロオロとし始める。



なんか気まずい……この空気……。



「あ、西嶋ん家ここだっけ?」



「え?あ、はい」



知らぬ間に自宅前まで到着していた。
どこをどうみても金持ちには見えない
普通のアパート住宅



まあ、ただのOLが金持ちなわけないけど……



「それじゃ、部長。ありがとうございました。また明日会社で……」



そう言って車を降りようとドアに
手を掛けるとパッとその手を
後ろから掴まれる



「えっ?部長……まだ何か?」


「あのさ……西嶋。俺……」


コンコン



部長が何か言いかけたところで
助手席側のドアが何者かにノックされた。



窓越しに外を見ると、そこには
少し背をかがめてニッコリと笑う
露人くんの姿があったーーーーーーーー。