近付いてきた朔君は
じっと私を見下ろして、小さくため息をつく


放課後、私を気にして保健室まで迎えに来てくれた朔君
すごく嬉しかったけど
バイトがあるからと、今日はお断りしていた



「……別にさ、無理しなくたっていいんじゃねーの?」

「…」

「焦んなくても
自分のペースでやっていけばいいんじゃねーの?」

「…でも」



少しくらい無理しないと
他の人に追い付けない

ただでさえ要領が悪いのに


自分のペースでやってたら
いつまで経っても前に進めない


置いていかれるばかり


私は、置いていかれる事がなにより怖い



「…大丈夫!」


一瞬、弱音を吐きそうになったけど
何とか持ち直し

不安な気持ちを隠すように明るい笑顔を向ける

朔君にこれ以上心配かけたくない

自分のことは自分で何とか出来るようにならないと


「…この前のも、バイト絡みだったか」


ぽつりと呟いて朔君は私の手を取って歩きだす


「朔君?」

「コンビニ。なんか買ってやる」

「いいの?」

「千円までな」

「わーいっ」


……空元気なの、ばればれなんだろうな


何かあればすぐ気付いて
それでも、私が気付いて欲しくないって思った事には深く踏み込んでこない


だから、朔君といると楽なんだ