紫音は鬼のような形相で三条君のことを睨みながら、宣言した。
「次千帆に手出そうとしたら、社会的に殺す」
「えー、怖いなあ。君の家大企業だからほんとにできそーだし」
「へらへらすんな、殴りたくなる」
「はいはい、言われなくてもそんなにイチャつくところ見せられたら、こっちも興醒めするって」
そう言って、三条君は私たちの横を通りすぎて屋上を出ようする。
なんか、三条君には闇がある気がする……。もしかして、悩み相談をしたかったっていうのは、本当だったんじゃないかな。
「ま、待って三条君!」
私は咄嗟に紫音の腕をすり抜けて、三条君の腕を掴もうとした。
……はずが、階段でバランスを崩し、私は三条君の背中にダイブしてしまう。
「ご、ごめん……!」
うしろからハグをしたような形になってしまい、私はすぐに離れて謝る。
しかし、三条君はなぜかカーッと顔を赤らめたまま、私のことを見つめて黙り込んでいる。
そんな私たちを背後から鬼のような顔で見つめている人がひとりいる。
振り返らなくとも怒気が伝わってくる……。
怯えている私に気づかずに、三条君は赤い顔をバッと片手で隠して、「なんだこれ……」とつぶやいた。
「なんか千帆ちゃん見るとドキドキすんだけど、もしかして今発情期になった?」
「へ? いやそんなわけは……」
「気のせいだ。早く消えろ三条」